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『この自由な世界で』

ケン・ローチ監督の最新作『この自由な世界で』を観て来ました。ケン・ローチ監督と言えば、『麦の穂を揺らす風』でパルムドールを獲って世界的にも有名になりましたが、この監督の描く世界、そのリアリズムや社会的な問題提起など、私は非常に好きで、今回も期待をして観に行きました。
主人公のシングルマザーであるアンジーは、働いていた職場をクビになり、自分たちで職業紹介所を始めることに。だがもっとお金を稼ぐには不法移民を相手にすることだと知り、超えてはならない一線を越え、歯車が次第に狂っていき・・・というストーリー。正直言って映画を観ていて主人公のアンジーには全く共感ができない、いやそれよりもむしろムカムカするくらい腹立たしく感じることもありました。でも、かといって彼女を「悪者」と批判することはできない・・・それは、自分たちもこの自由市場・資本主義の社会の中に身を置くならいつでも起こりうることだとわかっているからです。アンジーも借金を返して自分の子どもと普通に暮らしたいという、最初は些細な望みからであったにしろ、一歩その世界に足を踏み入れ、搾取される側から搾取する側へと立場が変わることで大きく人生も変わっていった。これがこの社会の怖い所。一方東欧や中東などから、この「自由」に希望を求めやってくる人もその世界の中に一歩足を踏み入れることで、彼らの「希望」が打ち砕かれてもその世界から抜け出せない不安定さなど、社会の矛盾を見事なまでに描いていました。
ケン・ローチ監督のすごいところは、常に客観的な視点からストーリーの進行を進めているところですね。歯車が狂いとうとう事件が起こりますが、アンジーに対して「ざまあみろ」という気にもなれず、かといって犯人に対して「ひどい」などとも思えない、どちらの立場にも立てない何とも複雑な心境になったのも、監督が一貫して客観的な視点で創っているからだと思いました。そして、あのラスト。結局世界は変わらないんですよね。こうしてまた社会の矛盾が・・・。「自由」って何なんでしょうね。いろいろ考えさせられました。本当にいい映画でした。

[ 2008/11/22 22:14 ] 映画 | TB(0) | CM(0)
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